ああ、映画観たの久しぶりだ。


ブロークバック・マウンテン
ラジオで爆笑問題の太田さん(だったかな?)が絶賛してたんだよね前。


予備知識は、「男同士の、友情を超えた感情」くらい。
というかそれがテーマらしかったので、十分といえば十分な予備知識だったか。


「そのつもり」で見ていたので、いつどのようにそっちに行くのか…なんて俗っぽいことばっかり最初気になってたんだけど、その流れはびっくりしてしまうほどあっけなくて(とその時は感じた)、えっそれでいいの?!と、ちょっと混乱してしまうほどだった。
でも、そのままずーっと続いていくんだよ、話が。生活が。人生が。


秘密を共有した二人は一旦離れ、それぞれの生活に戻っていく。それぞれの生活を続け、結婚し、子どもを作り、人生が続いていく。
再会し、絆を確かめ合い、秘密は続いていく。
それでもお互いの家族が待っている。生活は続いていく。人生は続いていく。
様々な出会いがあり、様々な出来事があり、様々な感情があり、それでも彼らの関係は強くなり、弱くなり、続いていく。
ある日突然、途切れるまで。


最初のうちは、とにかく山の・・つまり、ブロークバック・マウンテンの・・美しさに圧倒された。あたしはアメリカに行ったことないし、ブロークバック・マウンテンというのがどこにあるのか、実在するのかも知らないのだけれど、とにかくすごいきれいなんだ。かと言って、「どう、すごい大自然でしょ?」っていうアピールはナシ。普通に背景として存在している。ただし、普通にしてても十分存在感があるから(当たり前か?)普通じゃないんだけどさ。
そして、そこで羊を追う二人の姿に、うわーこれアメリカじゃないと撮れないよなぁなんてストーリーそっちのけで感心してしまった。
*さっきも言ったけど、アメリカ行ったことないんだけどね。しかも他の国もよく知らないから比較もできないんだけど、素直にそう思わせるチカラがあったわけだよその山のシーンには。
それから、焚き火に照らされる二人の顔。火の色が映って色がすごくきれい。


圧倒的な山の中で、そういう親密さを感じさせられていたから、二人の間に特別な感情が生まれたことをとても自然に受け入れられたのだと思う。
そうなんだ、あっけなかったんじゃなくて、あっけなく感じるほど自然だったんだ。


それでね、話が進むにつれて、わかってきたんだ。
この話は、男同士の恋愛がメインのテーマじゃないんだって。
人生の流れが、この映画なんだなって。


もちろん、中心には二人の恋愛がある。それは恋愛と呼べたり、友情と呼べたり、特別な感情と呼べたり、絆と呼べたり、いろいろなんだけど。
でも、お互いに別の相手と結婚し、子どもを作り、仕事を持ち、家族を養い、生活が続いていくんだ。
結婚は、偽装結婚なんかじゃなく、ちゃんと愛し合っての結婚。
それでもブロークバック・マウンテンの思い出は消えるどころか、ますます強くなっていく。


あたしがもっと幼い頃にこの映画を見ていたとしたら(仮に、という話だ。)、
「どうして恋人がいるのに、他の女性と結婚したんだろう?」と、そこでつまづいてこの映画に疑問を持ったと思う。
でも今は、そうは思わない。
人生とはそういうものだから。


出会ったり、別れたり、恋したり、恋されたり、仕事したり養ったり悩んだり傷付いたり傷付けたり憎んだり妬んだり疑ったり信じたり願ったり祈ったり嘘をついたり嘘をつかれたり愛したり愛されたり愛し合ったり流れたり流されたりしながら、人生って続いていくんだよ。
生活は続いていくんだよ。
そしてその続いていく日々の中で、その日々を生き抜くための希望が、彼らの場合ブロークバック・マウンテンだったんだと思う。
誰にだってあるはずなんだ、毎日を生き抜くための希望が。
あたしにだってある。過去の出来事だって、希望になる。
希望がなければ、人生は生きにくいさ。


なんかもうすごい人間ドラマだと思った。


それを映し出すための最高の背景が、アメリカの大自然だったのではないか。
何度も言うように、あたしはアメリカに行ったことがない。
だからたぶん「アメリカの大自然」のほんの一部だって、知らない。
それでも見てて、思ったんだ。
これは日本の山じゃ撮れないなと。
日本の山を馬鹿にしてるわけじゃないし、日本の映画を馬鹿にしてるわけじゃない、決して。
でも、質が違うと思ったんだ。
山のシーンを見ながら、「これを日本でリメイクすることはできるだろうか?」ってなんとなく考えてたんだけど、日本の山じゃ想像がつかなかったんだ。
羊が似合わなそうだとか、そういうことかもしれないし、しかも日本にも羊の似合う山やたくさんあるのかもしれないけれど、
あの山の風景で、彼らのカウボーイなりロデオなりの姿が、すごく馴染んでたんだ。
…あれ、なんかよくわかんないこと書いてないかあたし?大丈夫かあたし??
映画を観た人なら、なんとなくわかってくれるのではと淡い期待を持って、書き直さずにこのままにしておくことにする。


ストーリーに戻ろう。
あんな終わり方をさせるしかなかったのだろうか。
いや、あんな終わり方がふさわしいかったのかもしれないけれど。


じわじわと後から効いてくる映画だ。